アレルギー性鼻炎
くしゃみ・鼻水・鼻づまりを特徴とする代表的な鼻の疾患です。
アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が鼻粘膜を刺激することで発症します。アレルギー性鼻炎の有病率は近年増加しており、全人口の40%超と報告されています。
スギやヒノキ、ブタクサなどの季節性鼻炎(花粉症)とハウスダスト・ダニなどの通年性鼻炎があります。通年性鼻炎は、基本的に1年を通しての治療が必要ですが、重症例では日中、夜間の慢性的な鼻づまり、1日中鼻水が多くティッシュが手放せない、学校にティッシュ箱を持っていく、いつも口呼吸をしている、1日中鼻を触っているなどの症状が続き、小学生から学校での授業や勉強に集中できないなど深刻な影響が現れてきます。とくに口呼吸が慢性化して子供さんがそれに慣れてしまうと本人が苦痛を訴えることが少なくなるため長期間にわたってご両親も気づかないこともあります。勉強やスポーツに集中力の必要な時期、本人の本来もっている能力を最大限伸ばす重要な就学期に、慢性鼻炎はマイナスに作用することが多いことを知っておく必要があります。また成人では、仕事での集中力の低下や日常生活でのQOLの低下だけでなく、慢性の鼻づまりによって起こる夜間の睡眠時無呼吸が、良質な睡眠を妨げるだけでなく、脳血管や心血管系の重大な病気の引き金になることも報告されています。
このようにアレルギー性鼻炎は季節性、通年性にかぎらず、日中や夜間の正常な鼻呼吸を妨げ、全身的な病気にも深くかかわっているため、適切な鼻呼吸ができているかの正確な診断と正しい治療方針の選択は、非常に重要なことと言えます。
血管運動性鼻炎
自律神経が原因の血管運動性鼻炎も近年増えています。症状はアレルギー性鼻炎とほぼ同一ですが朝や夜間に症状が悪化し季節の変わり目や温度差にも敏感に反応します。血液検査では異常が出ずに診断がつきにくいのが特徴ですが、長期間の症状や症状のコントロールに悩んでいる患者さんも多く適切な診断が望まれます。
“学術的には、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎はどちらも鼻過敏症という診断カテゴリーの中で分類されている病名です。鼻過敏症はアレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎以外にも多くの鼻炎に分類されていますが(日本鼻科学会)、ここでは混乱を避けるために代表的な疾患のみ紹介しています。 ”
治療はどちらも抗アレルギー薬の内服と点鼻薬です。通年性鼻炎は1年間を通した鼻炎のコントロールが必要です。重症例はレーザー治療、アルゴンプラズマ凝固、セロン(高周波凝固)、手術治療を選択します。アレルゲンが確定されるアレルギー性鼻炎では舌下免疫療法もあります。
副鼻腔炎
膿性鼻漏・後鼻漏・頭痛・嗅覚低下などの症状があります。鼻づまりもあります。
一般的にちくのう症と言われています。
風邪のあとに起こる急性副鼻腔炎と3ヶ月以上症状がつづく慢性副鼻腔炎に分かれます。それぞれ治療方法が異なりますが、内視鏡、レントゲンやCTによる正確な診断が治療方針の決定に重要になります。
治療は、急性副鼻腔炎は3週間ほどの内服治療で改善します。慢性副鼻腔炎はポリープ形成による高度病変、慢性再発性症例や保存的治療抵抗例の場合にESS(内視鏡下副鼻腔手術)の適応となります。喘息を合併し、難治性でポリープの再発をくりかえす好酸球性副鼻腔炎も近年増加しています。好酸球性副鼻腔炎の多くはESSの手術が必要になります。
鼻中隔わん曲症
左右の鼻腔の間にある軟骨と骨の仕切り板を鼻中隔(びちゅうかく)といいます。
多くの場合どちらかに少し曲がっていますが、鼻中隔の曲がりが大きいとわん曲側の鼻腔空間が狭くなり、片側だけ慢性の鼻づまりを起こします。いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因の一つになることも指摘されています。鼻づまりの症状がつよく治りにくいときには手術が必要です。(鼻中隔矯正術)
副鼻腔乳頭腫
一見、通常の副鼻腔炎のポリープのように見えますが、病理組織検査では良性の乳頭腫を示します。ポリープの形状がやや硬く特徴的です。良性の腫瘍ですが再発があり、全摘出が基本です。当院では基本的に全例、内視鏡手術(ESS)で治療を行っています。
多くの完治症例を経験しています。
好酸球性副鼻腔炎
難治性、再発性の副鼻腔炎です。
鼻腔内に多発性のポリープ形成を認めます。70%に喘息を合併すると言われ、早期に嗅覚障害を起こしてきます。副鼻腔炎の代表的な治療薬であるクラリス錠(マクロライド系抗菌薬)の効果があまりみられません。喘息の悪化時に副鼻腔炎も増悪します。手術をしても再発しやすく、複数回の手術が必要となることがあります。重症例や再発例ではステロイド薬を内服します。
好酸球性副鼻腔炎は難治性で治療を継続する必要性などより、現在は厚労省の難病指定になっています。当院で難病指定の診断を行うことで申請書を提出し、認定されると国から医療費の一部負担が認められる行政上の優遇措置があります。詳しくは当院スタッフへお尋ねください。
正確な診断が正しい治療の基本です
鼻の疾患を正確に診断するために、当院では、初診時の患者さんの症状や経過にあわせて、必要な検査を選択して実施しています。
当院で行っている鼻の検査
- 鼻内観察
- 鼻内視鏡検査
- 副鼻腔レントゲン
- 副鼻腔CT(被曝量の少ないコーンビームCT)
- 鼻汁好酸球検査
- 鼻腔細菌検査
- 血液検査(RAST検査)(アレルゲン診断)
- 基準嗅覚検査(T&T)