オトベントという言葉を聞いたことがありますか?
オトベントは、中耳炎の治療で、自分で耳管通気を行う簡易の医療器具です。
今回は、このオトベントについて、書きます。
オト・ベント
オトは、英語のOto=耳を表します。
ベントは、英語のVentilationの略、Vent. =換気を表しています。
つまり、オトベントOtoVent は、耳に空気を入れる(換気)ための装置のことです。
https://www.meilleur.co.jp/products/view/19
(株式会社)名優 Meilleur のHPより転載。
上記URLより是非ご一読ください。
オトベントは、この様にして使用します。
何に使うの?
オトベントは、小児の滲出性中耳炎の治療に使用します。
成人でも滲出性中耳炎に対してだけでなく、現在、鼓室形成手術などの耳の手術後の自己通気治療としても使用が推奨されています。
また、飛行機搭乗による航空性中耳炎の予防や新幹線乗車に伴う耳管閉塞症の改善に、さらには、最近ではダイビングの耳抜き練習にも使用されています。
オトベントは、高い治療効果が証明されています。
日本耳科学会の小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年版でも、高く評価されており、使用が推奨されています。
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎は小児に多く、痛みを伴わない中耳炎です。中耳(鼓室)に滲出液が貯留することによって難聴が起こります。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%80%B3%E7%AE%A1
図1の赤色の部分が中耳(鼓室)です。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Otitis_media#Serous
この滲出性中耳炎は、主に小児の耳管機能が悪いことが大きな原因になっています。そのため、耳管機能を改善して、中耳腔に空気が入るようにする治療が必要です。
滲出性中耳炎と耳管については、当院トピックスでも書いていますので、ご一読ください。
耳管
耳管は、中耳(鼓室)と咽頭をつなぐ管状の器官です。成人で長さ3.5 cm, 直径3 mm,
外側は骨と軟骨、内側は粘膜で構成されています。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%80%B3%E7%AE%A1
この耳管は、中耳の空気圧と外気圧を同じにする重要な機能があります。耳管は、Eustachian tube または、Auditory tube (図3)と呼ばれます。
滲出性中耳炎の治療に、耳管通気という治療があります。鼻腔の奥の耳管咽頭口から細い金属管で強制的に耳管に空気を送り込む処置です。耳管から空気を送り込んで、滲出液を空気で置換する治療です。
大人はすこしだけ我慢することで、簡単にこの耳管通気治療ができます。さらに、自分で鼻をつまんで耳に空気を送る「耳抜き」ができます。
ところが小児は、耳管通気ができません。耳抜きもできません。耳管から空気を入れる方法がないのです。
そこで開発された方法が、オトベントなのです。
耳管に空気を
オトベントが、実際にどうやって使用されるのか。見てみましょう。
再度、初めの写真です。
これで、この子が一体何をしているのか、理解できましたね。
この男の子は、右の耳管通気をしています。
左の鼻の穴を指で押さえて空気が漏れないようにし、口から吸い込んだ空気を右の鼻の穴から出して、風船を膨らませます。鼻から空気を出すときは、口を閉じて空気が漏れないようにします。
こうすることで、風船を膨らませるとき、咽頭の空気圧が高くなり、高い空気圧で耳管が開いて中耳に空気が送られるのです。
オトベントに使用されている風船は、医療用にきちんと計算されて作られています。
鼻からの空気圧で膨らませる風船は、硬すぎるとうまく膨らませることができず、空気圧が上がりすぎて中耳や鼓膜を傷め、逆に柔すぎると風船が膨らみすぎて、空気圧が上がらずに耳管に空気が入りません。
オトベントの風船は、十分に耳管から空気が入る空気圧で、かつ、硬すぎて鼓膜を傷めることがありません。
普通の風船では駄目なのです。
オトベントはスウェーデン製です。
どこで買える?
オトベントの良いところは、滲出性中耳炎を自宅で治療できることです。
何より痛くない。辛い治療ではないこと。子どもさんが自分で進んでできること。
そして、1番は良くなることです。
オトベントの使用方法は、以下のURLで確認できます。(YouTube)
https://youtu.be/FVmBR3yz-lU
オトベントのカタログは、以下のURLで確認できます。
https://www.meilleur.co.jp/data_files/view/19/mode:inline
ぜひ一度、ご家族でご覧ください。
耳鼻咽喉科の役割
子どもさんが、滲出性中耳炎で困っているとき、ご両親も心配でしょう。
オトベントは、そんなお子さんとご家族に、救世主となる治療かもしれません。
それでは、耳鼻咽喉科医の役割は何でしょうか。子どもさんは自宅で、自分で治療できるのです。
それは、滲出性中耳炎の治療経過を観察して本人とご家族に教えてあげることです。
オトベントの治療をしながら、どれだけ良くなったかを、時々かかりつけの耳鼻咽喉科医師に尋ねてください。
耳鼻科に行くのが、初めて楽しみになるかもしれません。