前回、喉頭の解剖を含めた嗄声の解説を行いましたが、今回は実戦的な疾患についての話題です。
発声と嗄声
声が出る仕組みを含めて、嗄声の起こり方は、前回詳しく書きました。
→ 嗄声(させい)
声帯を上方から見たイラストです。(図1)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%B0%E5%B8%AF
” vocal fold (vocal cord)”が「声帯」です。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%B0%E5%B8%AF
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%B0%E5%B8%AF
左右の声帯が、開いている状態(写真1)から、閉じて触れ合う状態(写真2)になり、声帯の隙間を肺から呼出される空気が通り抜けることで音が発生します。(写真2)
閉じている両声帯の狭い間隙を空気が通り抜けるとき、気流によって声帯内側の粘膜が振動します。この声帯振動によって生じる音波を喉頭原音(glottal sound)と呼びます。
音は、音波であり、空気の密度の振動が伝播していく「疎密波」です。人の声は楽音と呼ばれる音に分類され、基本振動となる正弦波(基音)と、その周波数の2以上の整数倍の周波数の正弦波群(倍音)の複合です。
正弦波とは、サインカーブのことです。(図2)
人間には、基音の周波数を「音の高さ」、倍音の組合せを「音色の違い」として認識する能力があると言われています。
音の厳密な定義はすこし難解になりますが、規則正しい正弦波を中心として正弦波の倍数の音が複合した喉頭原音が、人の声の基本です。
喉頭原音は、声帯が物理的に規則正しい振動をするときに美しい音になります。
左右の声帯が、バイオリンの弓と弦のように触れ合うことで、美しい喉頭原音が作られるのです。
この振動する声帯に異常があるとき、また声帯の動きが悪いとき、声帯の振動は不規則になったり、弱くなったりします。場合によっては声帯がうまく振動しなくなります。
これが嗄声です。
嗄声の種類と原因は?
嗄声は一般に、GRBASスケールで評価され、4つに分けられています。
G: Grade (程度) 0, 1, 2, 3で表現する
R: Rough (粗慥性)
B: Breathy (気息性)
A: Asthenic (無力性)
S: Strained (努力性)
R(粗糙性(そぞうせい)嗄声)は、ガラガラ声、ダミ声です。声帯の振動が不規則になって起こります。風邪、喉頭炎、声帯ポリープなどでみられます。声の出し過ぎやタバコの吸い過ぎ、お酒の飲み過ぎなどもこれに入ります。職業歌手や教師の方、仕事で1日中声を出している方などには、このタイプの嗄声が起こりやすく、声帯ポリープが発生することもあります。
B(気息性嗄声)は、すーすーと息漏れする、かすれ声です。声帯が完全に閉じないためにおこります。声帯結節、声帯萎縮、声帯溝症、反回神経麻痺などのときにみられます。加齢による声帯の萎縮によっても起こりやすくなります。
他の病気によって起こる反回神経麻痺もありますので、注意が必要です。(甲状腺がん、肺がん、食道がん、大動脈瘤など)
A(無力性嗄声)は、力のない弱々しい声です。発声時に働く声帯筋の力が弱いことによります。神経筋疾患などで、筋肉に力が入らない場合などに起こりやすくなります。
反回神経麻痺などでもみられます。
S(努力性嗄声)は、過度に力の入った、息むような声です。痙攣性発声障害などでもみられます。
嗄声をきたす疾患は?
嗄声の分類に従って疾患を分けて説明していくと複雑になります。ここでは、嗄声の種類(RBAS)には関係なく、嗄声をきたす疾患をリストアップして、各疾患ごとに説明していきます。全疾患についての解説は大量になりますので、代表的な疾患を選んで書いていきます。
嗄声をきたす疾患
急性声帯炎
声帯ポリープ、声帯のう胞、声帯結節
声帯萎縮、声帯溝症、反回神経麻痺
ポリープ様声帯、喉頭肉芽腫
下咽頭がん、喉頭がん、肺がん、食道がん、
甲状腺がん、
胸部大動脈瘤、縦隔腫瘍
その他
急性声帯炎
ウイルス性急性上気道炎(風邪など)によって咽頭喉頭、気管支に感染による炎症が起きると、粘膜の発赤と腫脹が起こります。声帯も炎症により赤く腫れて声帯粘膜の浮腫を起こします。このため声帯粘膜の正常な振動ができずに声が枯れてしまいます。急性声帯炎はウイルス感染だけでなく細菌感染によっても起こります。さらに運動会やスポーツイベントなどでの大声の出し過ぎによっても過度な声帯振動による粘膜の浮腫が起こるため急性声帯炎が起こります。
急性炎症による一時的な粘膜腫脹ですので、治療はとくに何もせずに自然治癒します。炎症がつよいときは、声帯の安静と吸入治療が有効です。
日常的に発症している可能性が高く、医療機関を受診しないことも多いと考えられるため、実際の発症は確認されるよりずっと多いと思われます。嗄声を起こす疾患の中で最も多いと言えるかもしれません。
両側の声帯粘膜は赤く充血(🟥)しています。(図3)
声帯ポリープ
声帯の酷使(大きな声を出す、長時間歌い続ける、毎日長時間話す)によって、声帯の細い血管が一部破裂して声帯に血腫ができることが原因と言われています。声帯を安静に保つと血腫は自然に吸収されますが、血腫ができた状態で声帯を酷使し続けると声帯粘膜が過剰増生してポリープを形成します。
治療には声帯の安静(できるだけ発声を控えること)を保つことが必要ですが、保存的治療でポリープが自然治癒しない場合は、手術治療が考慮されます。手術治療は、全身麻酔下に行われるラリンゴマイクロサージャリーと呼ばれる手術です。ファイバースコープでポリープ切除を行うこともあります。
左声帯前方1/3の部分に球状のポリープが確認されます。このポリープが声帯の正常な振動を妨げています。
ポリープは良性です。(写真3)
声帯結節
声帯結節は、声帯に発生する炎症性の硬い瘤(こぶ)です。声帯の前方3分の1に発生することが多く、大きさはポリープよりずっと小さく、通常、両側性に発生します。
両側の声帯の前方1/3の部位に小結節が見られます。結節は硬く小さい瘤ですが、良性です。
声帯結節(Vocal cord nodule)は慢性的な声の使いすぎ(叫ぶ、大声を出す、歌唱する、長時間低音の発声を続ける)などが原因になって、両側の声帯に小さな瘤状の結節が発生します。男性よりも女性にやや多く、小児にも発症します。声帯ポリープは通常1側性ですが、声帯結節は両側の声帯に生じる[2]。
声帯の振動は、両側の声帯粘膜の摩擦によって生じますが、摩擦の頻度が非常に多いと声帯粘膜に浮腫が起こり、浮腫と治癒過程を繰り返すうちに声帯粘膜に線維化が起こって、硬い部分が発生するのです。これが声帯結節です。
歌手や謡(うたい)など、職業的に声帯を酷使する人に多く発生する疾患のため、別名、謡人(ようじん)結節と言われることもあります。
日本耳鼻咽喉科学会HP
http://www.jibika.or.jp/citizens/daihyouteki2/onsei_disease.html
ポリープ様声帯
ポリープ様声帯(Polypoid degeneration of Vocal cord)とは、声帯粘膜でなく声帯粘膜下の空間(ラインケ腔)に粘稠な水分が貯留して粘膜の水腫(水膨れ)になり、声帯全体が腫大した状態です。通常、両側性に発症します。
ポリープ様声帯での発声は、水枕を擦り合わせているのと同様ですので、声帯粘膜がうまく振動できず、低音で掠れた声になります。粘膜の水腫が高度になると、肥大した声帯によって声門が狭くなり、呼吸困難をともないます。
長年の習慣飲酒、喫煙、大声で喋る、などが原因と言われています。とくに喫煙は最重要因子で、タバコを吸いながらお喋り好きな人ほどポリープ様声帯のハイリスクになります。
(家庭の医学大全科)
防衛医科大学校耳鼻咽喉科学教授 塩谷彰浩先生監修
https://katei-igaku.jp/dictionary/detail/150431000.html
両側の声帯粘膜下ラインケ腔に水分貯留があり両声帯の著しい浮腫状腫大(水ぶくれ)を認めます。(写真6)
(須磨区医師会HP にしむら耳鼻咽喉科
院長 西村一先生のご投稿写真から引用)
http://www.sumaku-ishikai.jp/blog/2019/04/post-35-1464764.html
https://www.nishimura-ent.com/
両側声帯の腫大を認め、とくに右声帯(画面の左)は腫大が著しく正中線を超えて声門を狭窄しており、将来的に突然閉鎖して呼吸困難を起こす危険性がある状態です。(写真7)
反回神経麻痺
両側の頚部を下へ向かって走行する迷走神経から180°反転して上方へ走行し、喉頭に分布する神経を反回神経といいます。 (嗄声)
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Recurrent_laryngeal_nerve
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Recurrent_laryngeal_nerve
左反回神経は大動脈弓部を、右反回神経は右鎖骨下動脈を回って180度反転します。反転して上向した反回神経は第6頚椎の高さで終枝の下喉頭神経を分枝します。下喉頭神経は下方から喉頭に入り同側の声帯および喉頭筋群の運動を支配(コントロール)しています。
反回神経(下喉頭神経)に支配される喉頭筋は
後輪状披裂筋(後筋) 声門を開く
外側輪状披裂筋(側筋) 声帯を閉じる
甲状披裂筋(内筋) 声帯を収縮、弛緩させる
の3筋群です。片方の声帯の開閉運動と緊張をコントロールしています。
反回神経は下喉頭神経の他に、気管枝、食道枝、下心臓枝をそれぞれ分枝しています。
反回神経は頚部の手術(外傷)、腫瘍になどによって障害されることがあり麻痺が起こります。片側の反回神経麻痺が起こると声帯が動かなくなるため、嗄声が起こります。(片側性反回神経麻痺=片側性声帯麻痺)
片側性反回神経麻痺の原因は1/3が腫瘍,1/3が外傷,1/3が特発性と報告されています。
頭蓋内腫瘍、血管障害、脱髄疾患、によって延髄の疑核の麻痺が生じて迷走神経麻痺が起こります。
頭蓋底腫瘍、頸部の外傷によって迷走神経障害が起こり、迷走神経麻痺が起こります。
迷走神経麻痺は分枝の反回神経麻痺をきたします。
反回神経麻痺は,頸部や胸部を反回神経が走行している部位に何らかの病変があると起こりやすくなります。
大動脈瘤、僧帽弁狭窄症、縦隔リンパ節炎、甲状腺、食道、肺、縦隔等の腫瘍や外傷、神経毒(鉛,ヒ素,水銀)、ジフテリア感染症による神経毒性、頸椎の損傷または手術などが原因疾患になります。
特発性反回神経麻痺のほとんどはウイルス性神経炎が原因と言われています。
反回神経麻痺が起こる胸部・頚部の手術には、甲状腺腫瘍摘出術、食道がん摘出・再建術、動脈管結紮術、頚椎手術などがあります。
反回神経麻痺は、片側の障害では声帯が完全には閉じなくなるため嗄声になりますが、両側の障害による反回神経麻痺では声帯が中間位(正中位)で固定してしまうために喉頭の声門が十分に開かず、呼吸困難となります。両側反回神経麻痺は症状としての嗄声が起こりますが、生命を脅かす非常に危険な状態であり、気道の確保のために緊急の気管内挿管や気管切開が必要となることがあります。
(写真8) 両側反回神経麻痺(両側声帯麻痺)によって声門がほとんど閉鎖しており、呼吸苦をともなっています。呼吸は可能ですが、突然、完全閉鎖して呼吸困難を発症する危険性が大であり、緊急の処置が必要な段階と思われます。
声帯溝症
声帯溝(みぞ)症、声帯溝(こう)症の2つの読み方があります。
左右の声帯に皺(しわ)のような「溝(みぞ)」ができる疾患です。声帯が完全に閉じないため、発声時に息漏れの状態(声門閉鎖不全 =左右の声帯に隙間ができる) となります。
正常では一息で15秒以上発声ができますが、声帯溝症では数秒しか続きません。そのため若年者においては嗄声だけでなく、大きな声が出せない、常に小さな掠れ(かすれ)声しか出せないなど、対人関係において音声言語コミュニケーション障害が起こり問題になります。
声帯溝症では嗄声だけでなく、声帯が完全に閉じないため「息こらえ」ができず「力が入らない」「踏ん張れない」などの症状が起こります。声帯が常に閉じないため誤嚥が起こりやすいなど、日常生活でもQOLの低下をもたらします。
高齢者では自然経過によって声帯の萎縮がみられ、声帯は痩せて溝ができやすくなります。さらに左右の声帯が完全に閉じない「声門閉鎖不全」が生じやすくなりますので、高齢者の声帯溝症は、発声の困難と同時に誤嚥に対して留意しなければなりません。
若年者においては外見上問題がないために、その個人の客観的評価においてとくに職場での対人関係などにおける負の評価となりやすい側面があり、社会生活上の大きな悩みとなります。
(九州大学大学院耳鼻咽喉科学教室 音声嚥下研究室 HP)
https://www.qent.med.kyushu-u.ac.jp/group/group04.html
両側声帯に溝が形成されています。(写真9)
喉頭肉芽腫
喉頭肉芽腫は、声門後方の披裂軟骨声帯突起部や軟骨部に生じる腫瘤性の病変です。声帯後部同部位の粘膜に生じた損傷が原因となって、これに反復する刺激が加わり、肉芽が形成されると考えられています。気管内挿管による粘膜の損傷、胃食道逆流(逆流性食道炎)による胃酸の咽喉頭粘膜刺激、声帯の酷使による機械的な刺激、などが喉頭肉芽腫を形成する要因と言われています。
症状は咽喉頭異常感や発声障害が多いですが、無症状で胃食道内視鏡検査のときに偶然見つかる場合もあります。
両側声帯の後方に球状隆起性の肉芽腫を認めます。(写真10)
(九州大学大学院耳鼻咽喉科学教室 音声嚥下研究室 HP)
https://www.qent.med.kyushu-u.ac.jp/group/group04.html
左声帯後方に表面平滑で球状隆起性の腫瘤を認めます。左声帯肉芽腫の診断です。肉芽腫は吸気時に声門を塞ぎかけており、呼吸困難をともなうものと思われます。(写真11)
近年、従来は気管内挿管の刺激によると考えられてきた病態の多くが、胃酸の咽喉頭逆流によって肉芽腫が発生しているとの報告があります。実際は多くの症例が胃酸の咽喉頭逆流によって起こっている可能性が高いと考えられています。
治療は、胃酸抑制のためのPPI(Proton pump inhibitor)製剤の投与が行われます。8-12週間のPPI投与によって肉芽腫の大きさが減少したりまたは肉芽腫が消失したりします。
喉頭乳頭腫
ヒト乳頭腫ウイルス(Human Papilloma Virus, 6型, 11型)の感染によって起こる良性の腫瘍です。ウイルスは声帯粘膜上皮直下に潜んで増殖します。
乳頭腫により声帯の振動が妨げられ、嗄声が起こります。嗄声は乳頭腫の部位や大きさ、進展度によりますが、乳頭腫が声帯全体に拡がった場合は、まったく声が出なくなることもあります。乳頭腫は喉頭のあらゆる部位に生じますが、声帯が好発部位です。乳頭腫が気管に進展すると、気道狭窄を起こし呼吸困難をきたすことがあります。
小児では放置すると乳頭腫の増殖から気道狭窄を起こし、呼吸困難や喘鳴、チアノーゼを起こすこともあり注意が必要です。
乳頭腫は病理学的には良性腫瘍ですが、手術を行なっても再発することが多く、一度の手術での完治は困難です。なかには数10回に及ぶ手術が必要な場合もあります。成人の乳頭腫は4%が悪性(がん)化することが報告されています。
乳頭腫はあたかも乳頭の集合のように観察され、診断は困難ではありませんが、症例によっては悪性腫瘍との慎重な鑑別診断が必要になります。
治療は、CO2, YAG, KTP レーザーを使用した喉頭内視鏡下レーザー手術(蒸散手術)が基本です。乳頭腫が発見された時点ですぐに手術を行う必要があります。再発症例に対してインターフェロン局所注入療法の効果が報告されています。ある種の漢方薬も効果があります。
乳頭腫の原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は性感染症の1つであり、日常生活では周囲へ感染することはありませんが注意が必要です。
YESON Voice Center HP
https://jp.yesonvc.com/page/2_2_8.php
両側声帯、声門上、声帯後方から気管内まで進展した高度の乳頭腫を認めます。(写真13)
喉頭がん
嗄声をきたす重要な疾患に喉頭がんがあります。他の疾患は難治性の乳頭腫はありますが良性ですので、喉頭がんとは基本的に治療方針が違ってきます。
喉頭がん(Laryngeal cancer)は、声帯を含む、喉頭上皮に発生する悪性腫瘍の総称です。
がんの発生部位によって声門上がん、声門がん、声門下がんの3つに分類されています。
声門上がん30-35%、声門がん60-65%、声門下がん1-2%です。声門がんが最も多くみられます。喉頭がんの90%は扁平上皮癌です。
喉頭がんは60歳以上に発病のピークがあり、発生率は10万人に3人程度です。男女比は10:1で圧倒的に男性に多く、危険因子は喫煙とアルコール多飲です。喫煙とアルコールの継続的刺激が発がんに関与すると指摘されており、喉頭がんの患者さんの喫煙率は90%を超えています。
アルコール多飲が声門上がんの発生を高めることが報告されています。
喉頭がんの症状は、嗄声、喉頭違和感、嚥下障害、嚥下困難、血痰などがみられ、進行がんでは食物の通過障害、呼吸困難などが起こります。
一般に声門がんでは、早期から嗄声が出現しますので早期発見が可能です。これに対して声門上がん、声門下がんは、早期には無症状または軽い症状で経過することが多く、嗄声はがんが進行してから出現します。そのため診断時に進行がんで発見されることも稀ではありません。
声門上がんは、喉頭の異物感や嚥下時の痛みがあります。頚部のリンパ節に転移しやすい特徴があります。声門下がんは無症状の期間が長く、がんが進行すると気道を閉塞して嗄声や呼吸困難を起こします。
(声門がんT1b) 左声帯に腫瘍がみられ、前交連を超えて一部右声帯に及んでいます。(写真14)
http://www.venus.dti.ne.jp/~memikami/cancer.jpg
声門がん、声門上がん(T1a, T1b, T2) (写真15)
多くの症例で喉頭内視鏡による診断が可能です。確定診断は生検によります。(病理組織検査)
治療は病期分類に従って行われます。
早期がんでは手術と放射線治療。進行がんでは手術、放射線治療、化学療法の3者併用療法が行われます。
進行がんでは、声帯を含めて喉頭を摘出しなければならないことがあります(喉頭全摘)。喉頭全摘後は発声ができないため、人工喉頭、食道発声、気管食道瘻発声などによって代替発声法を獲得する必要があります。
喉頭全摘後は頚部前面の永久気管孔から呼吸することになります。
喉頭がんについての診断、治療はかなり大量の情報になりますので、紙面の関係でここでは省略します。
この頁では、嗄声があるとき喉頭がんの可能性があることだけ、重要ですので記憶しておいてください。喉頭がんは、嗄声がみられるとき最も慎重に鑑別診断を行う必要がある疾患です。
あなたに嗄声があるとき
嗄声をきたす疾患について、すこし詳しく書きました。多くの情報をお伝えしましたが、重要なことはいったい何でしょうか。
“3週間を超えて嗄声が続くとき、耳鼻咽喉科医を受診してください”
今回ぜひお伝えしたいことは、この1文に尽きます。
とにかく先のばしにしないでください!
かかりつけの耳鼻咽喉科医から「すこし経過を見てみましょう。」「炎症が引いてから詳しく検査しましょう。」と言われれば、その通りにして診断していただけば良いですし、
「単なる声帯の炎症ですね。」と言われれば、安心すれば良いだけです。
嗄声はさまざまな疾患で生じます。